運動発達の成長には、個人差がある
こんにちは、ゆきです。
今回は、子どもの運動発達についてお話します。
小児のリハでは、この運動の『正常発達』をもとに、課題のある子どもたちのつまづきを評価しアプローチします。
この『正常発達』を知れば、次にどのような動きを引き出す遊びをしてあげたら良いのか分かるため、セッションのフィードバック時には、「家でできる発達を促す遊び方」を必ずお母さん、お父さんにお伝えするように心がけています。
このような不安点について、解消できるような内容をまとめさせていただきました。
『正常発達』は、一般的に月齢で表記されています。
そして、運動発達は、「これができたから、次はこれが獲得できる」といった流れを必ず通ります。
飛び級のように段階を飛び越える事は決してなく、一段一段丁寧に積み重ねて行きます。
3ヶ月検診や7ヶ月検診、1歳児検診などの発達検診でも、早期の介入が子どもの発達を促せるため、「正常発達」を基準に支援の有無をみていくので、その「基準」は必要です。
しかし、発達はとても個人差がありますので2〜3ヶ月の遅れは許容範囲です。
なので、しばらくは様子を見ていてください。
遅れのある子どもさんは、検診では“要観察”となる子どもさんもいるし、さらに専門職による運動発達の相談事業へ、声をかけられる場合もあると思います。
不安な時には一人で迷わず、すぐに町の子育て支援や専門機関に相談されたら、一緒に考えてくれるので、ぜひ相談する事をお勧めします。
特に2ヶ月経っても運動面の変化が見られない場合は、子どものためのヒントがもらえるため、行かれてください。
子どもの運動発達は経験の積み重ねが大切
私は、町の検診で運動面の遅れを指摘された子どもさんの相談に行っていました。
そこではまず、子どもさんの遊びをみて、今の発達段階を評価します。
そして次の段階に進むために、獲得してほしい運動の経験をお母さんお父さんが、遊びの中で取り入れる方法をお伝えします。
そうすると、2ヶ月後に保健師さんに確認したところ、8割の子どもさんができるようになっていました。
新米お母さん、お父さんは、まだまだ関わり方・遊び方が分からず、子どもが経験不足になっていることがあるのです。
【月齢別】子どもができるようになる動作『正常発達』について
それではここで「月齢と、どのようなことができるとその動作が獲得されるのか?」
を見ていきましょう!
新生児
この世に生を受けた時にいろいろな「原始反射」を備えて生まれてきます。
詳細は、以前の記事『原始反射とは?いつまででるの?』をご参照ください。
満期産で生まれた子どもは、全身の曲がる筋肉の緊張が優位に働いた状態で生まれてきます。
“全身が曲がる”ということは、全体的に丸まりますよね?
丸の状態ということは、布団に触れると面が(支持面)が小さく、仰向けで寝かせても安定しないためにコロコロ寝返ってしまうので、おくるみなどで包み安定した姿勢を作ってあげるのです。
また、体を丸める筋肉が強いですが、強いと言っても重力に抵抗しながら丸め続ける筋力がまだ無いため、重力に負けて全身が伸びてきます。
そして、また丸める。
この繰り返しと一緒に原始反射の影響もあり、手足がバラバラにランダムに動いています。
この時期は、それらの動きも随意的な動作(自分の意識で動かす)が少なく、寝ているかバタバタ手足が動いていて、コントロールすることが難しい時期です。
また、この時期には、頭を正中位(真ん中)で止めることができず、左右どちらかを向いています。
この頭を左右へ動かす事ができることは、仰向けでは、おっぱいを探す探索反射をするために利用しており、うつ伏せでは、横を向くことで気道を確保する救命反応に利用するためと言われています。
抱っこでの哺乳の経験は、首の座りの準備になるので、寝不足に負けず頑張ってください!
生後2ヶ月
脳が発達し、運動を邪魔していた反射がだんだん消失し始める時期です。
これはとても大きな意味があり、自分の意思で自分の体を動かす事で、自分の体に対して認識できるようになる経験の始めなのです。
背中は、大分伸びてきて支持面(床に触れる面)が広がり、丸まっていたのも少し伸びてきます。
体幹が安定したことにより、手足が活発に随意的に動かせるようになってきます。
下肢は両側性と言って、左右一緒に同じ動きでのキッキングなども見られるようになります。
うつ伏せにすると、両手は胸の下に敷かれた状態になります。
この時、お尻の方が高くなりモコッとした状態で、重心が鎖骨下にくるため、頭だけを上げて前を見る動きはできません。
両手を顔の下に持っていくと、重心がみぞおちの上の付近に下り、両手を肩より上に持ってくることで肩甲帯(けんこうたい)の安定が図れ、頭を少し上げることもできるようになります。
この時は、まだ、真っ直ぐ首を保つことはできないので、首が傾いて横方向を見るような頭の上げ方です。
生後3~4ヶ月
仰向けで、頭を真ん中で止めることができるようになり、抱っこしても首が傾かず安定するようになります。
これが首の座りです。
この時期には原始反射が消失し、両手が体の真ん中で出会います。
これを『正中位指向(せいちゅういしこう)』と言います。
手も足も真ん中で出会うのです。
これは、肩甲帯(けんこうたい)という、首を支える土台となる肩甲骨、肩関節周辺の動きがコントロールでき、筋力もつき安定する事で首の動きがコントロールしやすくなります。
手を見るときは、顎を引きます。
この動きは、首の全面と側面の筋肉の動きで行うため、首の前方、後方ともに筋活動が活発になり、より首の安定が測れるのです。
そして、両手を胸の前で合わせるとその合わせた手を見ることができるようになり、『目と手が出会う』時期でもあります。
これは、認知的に大きな意味があります。
感覚器でいうと、「目=視覚」と「手=触覚」が出会うのです。
目で見て触って操作して動きをまた見て…とすることで、私たちは、経験を積み重ねることができ、認知面を向上させています。
そのスタートの時期なのです。
目の運動発達の話もいずれまた紹介させていただきますね。
生後5~6ヶ月
仰向けでは、自分の足に気づき、手で両足を掴むことができるようになり、それもお尻も一緒に上がってきます。
これは『ボトムリフティング』と言われる動きです。
この動きをする事で、お腹の筋肉をしっかり使えます。
ブリッジ運動も見られます。
この連続で背這いのように進む子どももいます。
後頭部の髪の毛がくるくるなったり、はげちゃびんになる赤ちゃんも増えてきます。
この動きは、頭とお尻が近づく動きです。
ということは、首から骨盤までの筋肉が働いてできるようになります。
そして、ボトムリフティングから左右に重心が移ることで、うつ伏せに『寝返り』ができるようになります。
寝返りは、骨盤と体幹のねじれた動きが出てきます。
お腹の横から斜めにお腹の真ん中に走行する『腹斜筋(ふくしゃきん)』の働きも活発になります。
また、欲しいものまで手を伸ばし、引き寄せる事ができるようになります。
これを『リーチ』と言います。
うつ伏せでは、手のひらを床について支え、頭と胸を持ち上げることができるようになります。
これを『on hands(オン ハンズ)』といいます。
これは、3〜4ヶ月の時期を経て、肩甲帯が安定したからこそ、手を床についてもぐらつかず、自分の体重を支え続けることができるのです。
そして、この姿勢で前の物に「リーチ」するとします。
例えば、右手を前に伸ばすとそのまま右前方へ崩れます。
今度は左手を「リーチ」します。
すると左前へ崩れます。
これを連続繰り返すとどうなると思いますか?
崩れながらも前に進みますよね?
これがずり這いの始まりです。
また、飛行機のように、両手両足を伸ばして反り返る動きも見られるようになります。
これは『airplane肢位(エアプレーン しい)』と言います。
これは、ブリッジ同様背中の筋活動によるものです。
また、このまま方向転換することができるようになります。
これを『ピボットターン』と言います。
これはエアプレーンの時に、例えば左右の重心運動が起こり、足がバランス反応で横方向へ開いて床につくなどして向きが変わるのです。
これらの動きで腹部周辺の筋力がつき、骨盤も安定してきます。
また、手のひらで支える事もできるようになります。
これらの経験の積み重ねで『腰の座り=お座り』ができるようになります。
生後7~8ヶ月
ハイハイの肢位をとれる時期です!
これは、以前書いた『ハイハイはいつからできるの?ハイハイが大切な4つの理由』の記事をご参照ください。
生後9~10ヶ月
ハイハイ移動が主な時期ですが、ハイハイに加え『つかまり立ち』が見られる時期です。
これは、ハイハイで机の下などに来ると、認知機能が高いと「見えない」机の上があることに気づき、興味を持ちます。
私たちも興味が出てくると「見たい」ですよね?
赤ちゃんは、まだ見ぬ世界を知りたくてつかまり立ちをしようと思うのです。
もちろん、始めは机に片手をかけてどうしたらよいか分からず、泣いてしまう子もいると思います。
でもそこから、机に手をかけた方に体重が乗るように重心を移動させ、両手を机の上に置けます。
膝立ちになっている足も、左右への重心移動をさせながらそのまま前に進んだり、片足を立てたりし始めます。
片足立ちになると、その片足立ちの方へ重心を移動させ、あっという間に立ち上がれるようになることが多いです。
立ち上がれた赤ちゃんの顔って、とっても満足げで嬉しそうな表情しているの知ってますか^_^
生後11~13ヶ月
つかまり立ちでの遊びがとっても増えてきます。
片手を机につき、体を支えながら左右へリーチを繰り返すことで、左右への重心移動を行い、重心が乗っていない足が自由に移動させることができ、『伝え歩き』ができるようになります。
この時期は、ハイハイとつかまり立ちとが入り混じりながら、足の裏で支える経験や左右の手足に重心を移動させることを経験しています。
1歳〜1歳3ヶ月
伝え歩きで左右の重心移動を経験し、片手支持で前を向きながら伝え歩きすることで、前後の重心移動を経験してきます。
これが独り歩きの土台です。
降り出したい足の反対側へ重心を移動させ(左右への重心移動)降り出した足を前方への重心移動をしながら床に足をつけ、今度は更に前へ重心移動させ、前へ移動します。
この時、骨盤周囲の安定性が無いと重心移動が起こらず、足を動かすことが難しいのです。
つかまり立ちの時に、体をねじりながら何かにリーチをする遊びをいっぱいすると、より安定性が高まります!
このようにして、約8割の子が1歳3ヶ月までに歩行を獲得します。
しかし、最初に述べたように、2〜3ヶ月のズレは許容範囲なことをお忘れなく!
今回の内容をみて、どうすると(どの動きを誘発すると)次の段階の動きが獲得できるのか?の関わりのヒントにしていただけたら嬉しいです♪