子どもの感覚特性が分かれば育児でも得する!
こんにちは、ゆきです。
「感覚統合(かんかくとうごう)」とは何なのか?
初めて耳にする方も多いと思います。
発達に課題のある子どもさんの訓練では「感覚統合療法」として、主に作業療法士が行うことの多いセッションです。
「感覚統合」の理論は、乳幼児期の育てにくさや、子どもの不器用さの原因を考える時にとても役立ちます。
子どもの感覚特性を知っているのと、知らないのとでは、親が感じる育児ストレスが圧倒的に変わってきます。
そこで今回は、
この辺りを簡単にお話ししたいと思います。
「感覚統合」って何?
感覚とは、各器官で受け止める刺激の事です。
みなさんがよく耳にしている五感の「触覚」「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」があります。
これに、感覚統合理論では「前庭覚(ぜんていかく)」「固有受容覚(こゆうじゅようかく)」の2つが加わり7つの感覚があり、最も重要とされるのが、「触覚」「前庭覚」「固有受容覚」です。
ちなみに、「触覚」と「固有受容覚」2つで、「体性感覚(たいせいかんかく)」といいます。
「前庭覚」とは、体の傾きや回転、動きのスピード・方向性を感知する感覚です。
それと、眼球運動とも関係があります。くるくる回転すると眼振を引き起こします。
「固有受容覚」とは、筋肉の伸び縮みや関節の動きを感知する感覚です。
各感覚の受容器官は、以下のとおりです。
「視覚」=目
「聴覚」=耳
「嗅覚」=鼻
「触覚」=皮膚
「固有受容覚」=筋肉、関節
「前庭覚」=耳の中の三半規管と前庭というところ。
マニアックな情報ですが、三半規管、前庭には、それぞれリンパ液が流れていて、三半規管には根元にある有毛細胞という毛が生えている細胞が、頭が前後、側方水平方向へ回転した時にリンパ液の流れるスピードを感知します。
前庭には、耳石器というのが二つあり、水平方向と垂直方向のスピードを感知します。
耳は、「聴く」以外にも大切な役割があるんです!
各器官から入力された様々な刺激(感覚)は、脳へ送られてます。
脳もそれぞれの感覚を受け止める場所が決まってます。
受け止めた場所で情報処理され、脳から出力として身体(筋肉)へ命令が行き、何かしらの行動ができます。
この流れが滞りなくスムーズに行くのが感覚統合です。
例えば、歩いていて、サッカーボールがいきなり飛んできてあなたの前に落ち、驚いて立ち止まったとします。
その時の様子を感覚統合で説明すると、
「視覚」目でサッカーボールを見る。
↓
「聴覚」ボールの音や蹴った人の声を聴く。
↓
「前庭覚」急に立ち止まって頭が前のめりになる。
「視覚」情報より「サッカーボールだ!」
↓
「あたる!」
↓
「前庭覚」情報より「倒れないように水平に保てー!」
あたらないように踏ん張れ→筋肉へ命令が行き、おっと足で踏ん張り、バランスを保つように頭や体を動かした。
と、なります。
感覚統合は、入ってくる情報を整理して適切に指示を出すというとことで、「交通整理」と一緒と言われます。
感覚統合は、発達の基盤です。
この感覚統合の流れが、スムーズに繰り返すことで、いろいろな運動学習が積め、発達するのです。
感覚統合の発達モデルとして、ピラミッドで表現されます。
一番下の段に、
「視覚」「前庭覚」「固有受容覚」「触覚」「聴覚」がきます。
この統合ができるようになると二段目に、
「姿勢」「バランス」「身体の位置」「眼球運動のコントロール」ができるようになります。
次に三段目、
「身体図式(しんたいずしき)の形成」「運動コントロールの基礎」「身体の両側統合(りょうそくとうごう 例:両手で物を持つ)」
そして四段目に、
「コミュニケーション」「目と手の協調性(きょうちょうせい)」
最後の五段目に、
「情緒・社会性の発達」となります。
これは、段階的に積み上げなければ、どこか弱さがあったり、積み木の大きさにばらつきがあると、五段目まで積むのが難しいこと、土台から段階を踏んで発達する事を意味します。
弱さや大きさのばらつきが、子どもの発達のつまづいている部分なのです。
感覚の感じ方には、個人差がある
今度は、感覚の感じ方についてです。
感覚の「感じ方」「入り方」は個人差があります。
感覚の感じ方の閾値(いきち=感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの量。)が異なるのです。
例えば、多くの人が平均10の強さで感知するとします。
それが、20ないと感知しない「高閾値」、5の強さで感知する「低閾値」。
となります。
これらは「感覚統合」がうまくいっておらず、適切な運動の命令が下りない事を意味します。
子どもの行動特性について
『高閾値の行動特性』として、
入ってくる刺激に対して、にぶくて、気づきにくい。
例えば、転倒しても痛がらない。反応するまでに時間がかかる。などです。
先ほどの例えの10の刺激では満たされず、落ち着かずに自分から20の刺激になるように行動する。
例えば、一箇所でじっとしておれず、飛んだり跳ねたり、くるくる回ったりする行動。つめかみや指しゃぶりなどの行動。などです。
『低閾値の行動特性』として、
必要以上の刺激が入るので苦痛を伴うことが多いです。
例えば、手のひらや足の裏に砂が付くと大泣きする。特定の音で大泣きする。などです。
嫌な刺激を避けるために自分で逃げようと行動することです。
例えば、大きな音や騒がしいところで耳塞ぎする。工作のとき、糊や絵具など手が汚れる活動を一切しない。ブランコや高いところで遊ばない。などです。
感覚は、情緒の安定性においても感じ方が変わります。
落ち着いている時に横で騒がれても「楽しそう!」と思う事でも、イライラしている時に、騒がれると言われると「うるさーい!」てなりますよね?それです!
次にそれぞれに対する関わり方や経験の積み方をお話しします。
子どもの感覚特性に合わせた関わり方と遊び
過敏な子どもの場合:
・刺激が入りすぎて落ち着かない。
・注意力散漫で目移りしやすい。
・一箇所に注意を向け続けられない。
↓【対応方法】
周囲の視覚刺激を調整してください。
学校などで座る席を、お友達が目に入りにくい前の方にしたり、黒板周囲の掲示物をはずしたり。
お話を聞いて欲しい時や集中して作業にで欲しい時には、部屋のコーナーに保護者さんが来て、対面する位置に子どもがくるようにする。
また、左右の刺激をパーテーションなどて仕切る。
太陽などの明るい光に過敏な場合は、色付きのサングラスをかけると落ち着く場合があります。
個人によって色も黄色や青、赤など落ち着く色があるので、試してみるのも良いと思います。
過敏な子どもの場合:
・掃除機などの機械の作動音が苦手で耳塞ぎしたり泣いたりする。
・合奏の時間が苦痛。
・クラスの席が窓際で授業中外や隣のクラスの音が気になる。
・チャイムがきらい。
・バスや電車、駅、スーパーのでは、様々な音が同じように入ってきてきつい。
・声が反響する体育館や全体行事に入れない。
↓【対応方法】
過敏のある子の状態とは、例えばBGMが流れたカフェで対面で話をするとします。
そうするとわたしたちは、音楽やお皿の音、他のお客さんの声など耳に入らず、目の前の人の話を聴けます。
それは、必要な刺激だけ入力できるようにフィルターをかける事ができているからです。
しかし、過敏のある子は、大音量のライブ会場で話をする様に、それぞれの音が一度に同じ様な音量で入ってくるできつくて堪らないのです。
過敏がある子も、イヤーマフや耳栓といった、音が入りづらい道具があると、公共施設が平気になったり、全体行事にさんかできたりします。
これが1番お勧めです!
席を教団の前にしてもらう。
授業中は、窓を閉めてもらう。
クラスのスピーカーの音を一番低くしてもらう。
などの環境配慮もお願いしたいですね。
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過敏な子どもの場合:
・偏食が多い。
・お茶が飲めない。
↓【対応方法】
食わず嫌いな子では、一緒にクッキングすると食べれるようになる子も多いです。
こだわりでの偏食では、無理意地するのは禁忌。
どうせ食べないから子どものは準備しないではなく、子どもが興味持てるように少量で良いので準備してあげてください。
過敏な子どもの場合:
・公園の公衆トイレやお店のトイレには入れない。
・手にした物はなんでも臭いを嗅ぐ。
・手を舐め、その唾の匂いを嗅ぐ。
↓【対応方法】
臭い消しなどの携帯スプレーやマスクを持ち歩き、トイレの時に使用する。
手にした物を臭うとき、許容範囲と思ったら、そのままで良いと思います!
唾の臭いを嗅ぐは衛生的にNGなので、本人の好むにおい袋など持たせてあげる。
過敏な子どもの場合:
・指しゃぶりしない。
・四つ這いしない。
・手掴み食べしない。
・糊を指でさわれない。
・足の裏をつけたがらず爪先立ちになる。
・外を裸足で歩くのを嫌がる。
・特定の素材の洋服を嫌がる。
・シャワーがきらい。
低登録の子どもの場合:
・指しゃぶりをやめない。
・口に物を入れる。
・なんでも触る。
・絵具も素手で触りたい。
・ペンで自分の手足によく落書きする。
↓【対応方法】
過敏な子どもの場合:
本人が好きな遊びの中に本人が受け入れられる触覚遊びを取り入れて、徐々に慣らしていく。
例えば、砂がためならば、新聞紙遊びや小豆などの豆をつかった遊びで手が汚れない感覚遊びからはじめる。
お友達と一緒にすると、楽しそうな様子を見て挑戦したくなることが多いです。
絵具や糊などは、おしぼりを準備してあげ、汚れたらすぐに拭いていい事を伝えてあげる。
シャワーが嫌がった子に湯船を進めたら入れるようになった子もいます。
低登録な子どもの場合:
砂遊び、水遊び、スライム、小麦粉粘土など、どんどん触覚刺激の入る遊びを促してください。
3歳以上の指しゃぶりなどで辞めさせたいときには、スポンジや柔らかい毛のブラシ(爪の間を洗うブラシなど)で手のひらを優しくブラッシングしてあげるのも効果的です。
口になんでも入れる子は、はがためもおすすめです。
最近、インスタ映えする可愛い物が多くてワクワクします♪
過敏な子どもの場合:
・重力不安という現象が見られます。
※これは、例えばブランコなど前後の動きに伴い、重力を感じますよね?その感覚が不快で不安やパニックになる事です。ジャングルジムなどの高所や、吊り橋など足元が不安定な所、抱っこを嫌がる子も、この重力不安があるが原因かもしれません。
低登録な子どもの場合:
・高所からのジャンプを好む。
・ブランコは激しく漕ぎ、スピードのある遊びを繰り返す。
・感覚が入りにくいため、感覚を求めて、よくクルクルと回転して遊ぶ。(いくら回っても目が回らないが、自覚症状なく突然酔って吐くこともあります。)
↓【対応方法】
過敏な子どもの場合:
無理意地はNG!本人が受け入れやすい活動から経験を積む。
本人にまず確認してOKだったら、10回など、終わりが解るようにすると安心しやすいです。
そして、顔がみえるように向かい合って抱っこして、一緒にブランコに乗ったり、おんぶ遊びをしたり、膝の上に乗せて揺れる親子遊びをするのも良いです。
低登録な子どもの場合:
遊びの中で、直線や回転を感じることができるブランコ、トランポリン、滑り台などを用いて感覚欲求を満たす。
公園へ連れていくと走り回れるし、前庭覚を使う遊具が多いので、たっぷり感覚を入れてあげると落ち着けます。
あと、体力勝負ですが、室内では、肩車や高い高い、抱っこして振り回す遊びを提供してあげることもできます。
次の日かなり筋肉痛なのですかね(^-^;
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過敏な事はあまりありません。
低登録な子どもの場合:
・力が常に入っている。
・お友達を力強く押すことが多い。
・足音を立て歩く。
・どこでも飛んだりケンケンしたり逆立ちしたりすることが多い。
・爪噛みや洋服、物など噛む。
・運動するとぎこちなさがある。
・全身の絵が書けない。
・体の身体図式(自分の手足の長さを認識していること。適切な力のコントロールができること)ができておらず、器械運動が苦手。
↓【対応方法】
感覚の入力が人よりも多くないと気づかないため、出力する「力」も自分が分かる範囲で出してしまうので「力のコントロール」が難しい子がいます。
そうすると、常に力が入っていたり、本人をトントンと呼ぼうとしてもお友達に「叩いた!」とトラブルになる事があります。
この場合は、相手の前に立って声掛けで呼ぶ方法を伝えたり、優しく「トントン」する心地よい力加減があること、この力加減がよかったらすぐに褒めてあげること。
また、遊びの中でも紙風船や紙コップを用いて遊ぶことで、力を入れ過ぎると形が変わるため、視覚的に力が見えてくるので学習を積むことができます。
場所によって飛んだり跳ねたりできない所では、「静かにしなさい!」よりも「忍者ごっこ」と称して爪先で音を立てない様に促すと効果があります。
遊びでは、木登りやうんてい、相撲、山登りなどおすすめです!
また、荷物持ちなど重い物を持つときには、たくさんと固有受容覚が入るのでのお手伝いも好んでしてくれます。
爪噛みや物を噛むのは、「噛む筋肉の刺激」を欲した行動です。
この子どもたちは、飴玉もガリガリ噛んだり、ストローも噛み潰している事が多いと思います。
爪や物を噛む行動は、生活に支障をきたす場合があります。
そこで、ガムや飴玉、はがためなど噛んでも良いものに変えてあげるのも良いです。
そして爪噛みが酷く、深爪から出血し、遊びに集中できなくなってしまったので、最終手段として「苦い味のするマニュキュア」を現在使用中です。
(参照:子どもの爪噛み対策【バイバイチュッチュ】を試してみた感想)
もちろん、本人と話し合い、いっぱい遊びたいから爪噛み辞めたいと本人が決めて使い始めました。
成果は、また後日…
子どもの感覚統合と覚醒(脳が目覚めること)
感覚刺激には、覚醒をコントロールする作用があります。
脳の目覚めを「覚醒」と言います。
覚醒が低いとぼーっとしていて、覚醒が高いと興奮状態でどんな刺激も拾って注意散漫になりやすいです。
覚醒レベルが適度であったら、刺激に対しての反応が素早く、作業効率もとても上がります。
この脳の覚醒を適度な状態にするために必要なのが、「興味、関心がもてること」と「感覚刺激」です。
それぞれの感覚刺激には、覚醒を上げる作用のものと下げて落ち着かせるものとがあります。
例えば、寝起きでぼーっとした覚醒が低いときにトランポリンをすると固有受容覚、前庭覚の刺激が入り、覚醒が上がりますよね?
そして、覚醒が一番高い状態が、泣動作です。
抱きしめてぎゅーっと力を入れてあげます。
そうすると落ち着きますよね?
これも固有受容覚の刺激です。
同じ感覚刺激で作用が違いますが、覚醒をコントロールしていることは分かりますよね。
メジャーリーガーがガムを噛んでいるのもこの適度な覚醒に保つためです。
感覚の慣れについて
感覚には「慣れやすいもの」と「慣れにくいもの」があります。
また、「慣れ」には、本人の認知面の成長により「やってみたい」という興味や関心が出てくると受け入れられることもあります。
一番慣れが生じやすい感覚が「嗅覚」です。
廊下から部屋に入ると直ぐに何かの「におい」に気づいても数分もするとしなくなしますよね?
それです!
そして、慣れが生じにくい感覚が「視覚」「聴覚」です。
なので、苦痛にならないように刺激を調整する「術(すべ)=環境調整」をいくつか持っておくことをお勧めします。
まとめ
上記に出した行動の例は、一例に過ぎません。
主に発達に課題のある子どもたちによく見られる課題ですが、定形発達と言われる健常の子どもにも見られます。
経験不足から見られることもあるからです。
なので、「うちの子、当てはまるわー」と思われることがあったら、次のお休みの日には、ぜひ感覚遊びをたくさん一緒に体験してみてください。
子どもの発達は『楽しい』が大前提です。
大好きなパパ、ママと遊べるだけで楽しさ倍増です!
また、繰り返し経験してもなかなかできないや、教え方が分からない、本人がパニックになる、などの日常生活に支障をきたすのであれば、何らかの発達の課題があるのかもしれません。
その時は、子どもさんが一番辛いということを知ってください。
そして、子どもさんのために市町村の子育て支援課や専門機関へご相談されることをお勧めします。
専門家に相談する事で、家でどんな遊びや経験、環境づくりをしてあげたら良いか分かれば、子どもの「できたよ!」というドヤ顔をたくさん見る事ができると思います。
相談する事が敷居が高いなぁと感じるときは、子育てサークルに参加することもオススメです。
保育士さんや保健師さんがいらっしゃる所もあるし、いらっしゃらない所でも先輩ママさん達からいろいろな情報をもらう事ができると思いますよ!
最後に感覚統合に基づいた遊びが載っているオススメの本を紹介させていただきます。
子ども理解からはじめる感覚統合遊び 保育者と作業療法士のコラボレーション
今回のお話が、少しでもお役に立てれば幸いです。