子どもがスプーン・フォークを上手に使えない理由【月齢と持ち方】

子どもスプーンの持ち方 子育て・育児

スプーン・フォークを持つための手の機能的な発達

こんにちは、ゆきです。

作業療法士を20年やっています。普段は重症心身障害をもつ子どもたちや、発達に課題をもつ子どもたちと接しています。

 

前回、お箸の持ち方についてお話をさせていただきました。

今回は、スプーンやフォークの持ち方や操作方法など、子どもが『道具を操作できるようになるための手の機能的な発達』について、お話させていただきます。

 

「スプーンの持ち方がなんだか変なんです」
「なかなかうまくすくったり、刺したり出来ないんです」
「食べる時、半分以上食べこぼしがあります」
「片手にフォークを持ったまま手づかみ食べをよくします」

など、子どもさんの食事の「動作」についての相談がよくあります。

 

子どもの目の前にスプーンを置いたら、大人のような持ち方でにぎり操作することはないですよね?

道具に子どもが合わせるのではなく、子どもの手の発達段階に合わせて、道具を合わせていきます!

 

なので、上記のような相談を受けた場合、ほとんどの子どもさんは手の機能が追いついていないことが多いのです。

「正常発達」の視点で『手の発達段階』を見ていきましょう。

 

手の正常発達について

体幹を安定させる事が大切

積み木遊び

手で道具を操作するためには、始めに体幹の安定性を図る事が必須です。

この体幹が安定するためには、乳幼児期にたっぷり体を使った遊び(粗大運動遊び)をすることがとても大切です。

子どもが手で道具を操作するためには、手指の細かい運動が必要ですよね?

土台となる体幹が不安定だったら、手先の細かい操作ができません。

 

例えば、二つのロボットを作ります。

一つは、こんにゃくを体として、割り箸を手足とします。

もう一つは、粘土を体として、割り箸を手足とします。

どちらが「立ち続ける事ができる」と思いますか?もちろん、粘土の方ですよね?

 

こんにゃくでは、ぐらぐらしてバランスを取りづらく、バランスを整えて立たせる事ができたとしても、ちょっと「重心が移動する」だけで倒れてしまいますよね?

このこんにゃくは、体幹が不安定な状態です。

 

「重心の移動」とは、両手を机についた状態で右手を上げるだけで、左へ重心が移動します。

仮にスプーンやフォークの操作を右手ですると、重心は左へ寄ります。

体幹が不安定な場合、前や後ろ、左右へ姿勢が崩れたり、片膝を立てた姿勢になったりと、モゾモゾ動いている事が多いです。

また、崩れた姿勢を保とうと、左手を支えとして使って、机の下に落ちたり、お皿に添えれないことも多くあります。

 

体幹が安定している場合、左へ重心移動しても、その傾きに対して中心へ体を戻そうという姿反射(体の立ち直り反応)が現れ、右手使用時にも重心を真ん中で保つ微調整をする事ができるので、重心移動しても姿勢を崩すことはありません。

 

体幹の安定性を図るためには?

子ども椅子

子どもの「足の長さに合った椅子」を準備することです。

「足の長さに合った椅子」とは、足の裏がぴったりくっついていること、背中が背もたれに当たっている状態で、座面が膝裏までくる奥行のものです。

 

特に、道具を使い始めた子ども達は、椅子に座る姿勢に注意をしてあげてください。

体にあった椅子により、体幹の安定性はより上がり、手指の操作性がとても上がります。

(参照:子ども椅子で姿勢を正しく保つ方法と椅子の選び方

 

余談ですが…
幼稚園、保育園、小学校訪問した際に、本人に合っていない椅子や机を使っている子どもたちが多いです。なぜなら、大きさの「規格」が決まっていて、一人一人の体型にあった調整ができるものがないからです。
子ども達の希望を優先する先生が多いからです。本当は、本人に合った椅子や机にすると手先が楽に使えて集中力もより上がるのですが…(^^;

 

月齢と持ち方

子どもスプーン・フォーク

体幹がしっかりしてくると、10ヶ月頃からスプーンやフォークを持てる手になってきます。

以前書いた「子どもの箸はいつから?箸の持ち方を練習させる方法」の中でも書きましたが、手首の上にある「手根骨(しゅこんこつ)」が、月日と共に発達して骨になってきます。

この10ヶ月頃には1〜2個できている状態で、まだ手関節(手首)は不安定で、動きの自由度が大きいです。

自由度が大きいと関節が柔らかく、中国雑技団の人のように「そこまで曲がるの!?」というくらい動くことを言います。

スプーンの持ち方

この時の持ち方は、回内握り(かいないにぎり)と言います。

上から持つ持ち方で、親指も上に来るように持っている事がまだ多いです。

手首は手のひら側へ曲げて、スプーンやフォークの柄をにぎりしめた状態で持ちます。

 

操作する時には、手首は動かさずに固定して、肘が横へ突き出すような位置にあり、肩の動きですくう操作を行います。

動かす関節が体に近いほど大きく、肩も大きな関節の一つです。

この大きな関節を使う時には細かい操作や力のコントロールを行うことが難しいです。

 

また、スプーンの上下の認識や動かし方もまだまだ理解できてないため、片手にスプーンを持って他方で手づかみをして食べることが多くあります。

この時期は「スプーンで食べて」とするよりも、しっかり手づかみ食べを経験する事が大切です。

 

手づかみ食べは、指しゃぶりと同じで、発達の大切な役割があり、いろいろな感触を経験し、お口の中に入れる事で、手指の細かな動きや分離した動きの経験を積めます。

この経験で、スプーンやフォークを上手に握る事ができてくるのです。

 

不器用な年長の子どもさんに指しゃぶりや手づかみ食べをしたか?を聞くと、「してなかった」「させなかった」と言う返答が返ってくる事がとても多くあります。

「食べる」事は、お口の発達だけでなく手の発達も促す要因がとても詰まっているのです。

 

スプーン持ち方

次に親指が下へ来て、1歳半頃に、握り持ちから全部の指を使っての指先に近い部分(指腹つまみ)での持ち方になります。

そして、今度は、スプーンを下から持つ持ち方になります。

これを回外持ち(かいがいもち)と言います。

 

回外持ちは、親指は上に来て他の指全部が下に来た全指での握り持ちです。

スプーンの柄を下から持つと、手首が手の甲の方向へ曲がり指先が使いやすくなります。

肘は横に突き回していたのが、体に近い位置にきます。

そして、肩の横への動きが激減し、あまり動かず、肘から手首までの「前腕」のくるくる回る動きが出るようになります。

これは、肩関節が安定する事で徐々に小さな関節の動きが出るようになったのです。

 

スプーン持ち方

そして2歳半頃に、親指、人差し指、中指のみで持つようになります。

この時、薬指、小指がグーにする事で、手のひらに卵形の空間を保ち、より指先を使う事ができます。

もし、薬指、小指を伸ばして操作しているのなら、子どもさんは手に力が入り過ぎていたり、力のコントロールができずに操作がうまくいかず、手づかみで食べている事もあります。

 

この時の親指、人差し指、中指の鉛筆を持つような握り方を「静的三指」と言います。

これは、2歳半から3歳頃までにできるようになります。

静的三指は、小指と薬指を曲げる事で、“手のひらに空間を作り続けられる”という安定性を高められ、3本の指で持ち続ける事ができるのです。

 

そして、次の段階の「動的三指」へと繋がります。

「動的三指」とは、手首の若干の動きと、把持している三本の指の主な動きで操作する事です。

これができるとお箸操作へ繋がってきます。

 

まとめ

子どもの成長には、個人差があります。手の発達にも個人差があります。

そのため、月齢に合わせた持ち方ではなく、「個人の発達」に合わせた持ち方を促す事が大切です。

始めに書かさせていただいた相談内容ですが、道具が子どもの手の「個人の発達」に合ってないことや、椅子が合っておらず、体幹の安定性が図れていなかったことなどが原因な事もあります。

 

発達の段階を知る事ができると、どの部分でつまずいているのか、ステップアップするには、どのように関わってあげるとよいのか考えられます。

子どもが成功体験を積み重ねながら「自分で食べたい!」と言う気持ちをつくってあげる事が、一番の発達の促進になりますので、たくさん褒めながら子どもとの食事を楽しんでくださいね。

 

おすすめのエジソンのフォーク&スプーンも載せておきます。

 

動画の方では上手に食べることができる方法も合わせて解説しております。

よかったら合わせてご覧ください。